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Actin7 (ACT7) を植物開発の主要な調節因子として同定

Actin isovariant ACT7 controls root meristem development in Arabidopsis through modulating auxin and ethylene responses

Takahiro Numata, Kenji Sugita, Arifa Ahamed Rahman, Abidur Rahman

Phytochemistry (2017) Vol.137, p.52-56.

植物の根は土壌から必要な栄養素と水を植物に提供するため、植物/作物の最適な成長と発達および収量において、根の適切な発達は重要な要素です。さらに、温度ストレス、干ばつストレス、塩分ストレス、洪水などのさまざまな非生物的ストレス下では、根の成長が著しく阻害され、最終的には植物/作物全体の成長に影響を及ぼし、作物の収量が減少します。世界の人口は2050年までに91億人に増加しますが、農地は5%しか増加しません(www.fao.org)。さらに、気候変動のために、植物はこれまでになく頻繁にさまざまな非生物的ストレスに遭遇するため、世界中の作物生産性が限られてしまいます(IPCCレポート、2018年)。したがって、増加した人口を養い、SDGsの目標数2(飢餓をゼロに)を達成するためには、将来の非生物的ストレス耐性植物/作物を開発することが急務です。

このため、根の発達のメカニズムを理解することは、目標を達成するための第一歩として考えられます。本研究では、ラーマン研究グループは、モデル植物シロイヌナズナを使用して根の発達を制御する重要な調節タンパク質として、アクチンアイソバリアントの1つであるACT7を特定しました。ACT7タンパク質は保存性が高いタンパク質であり、植物種全体で同じ機能を果たしています。この発見は、世界中の科学者がより強力な根系構造を持つ植物/作物を開発するのに役に立ち、将来の農業と食糧生産に潜在的な影響を与えると考えられます。

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クズの花の赤紫色花色とデルフィニジン型色素

Red-purple flower color and delphinidin-type pigments in the flowers of Pueraria lobata (Leguminosae)

Fumi Tatsuzawa, Natsu Tanikawa, Masayoshi Nakayama

Phytochemistry (2017) Vol.137, p.52-56.

クズ(Pueraria lobate)は日本をはじめとし中国やフィリピン等に分布し,さらに,北アメリカに帰化しているマメ科の植物です.クズの花は古くから秋の七草の1つに数えられ,俳句の秋の季語としても知られている高貴な赤紫色の花色の花です.生薬として,クズの花のイソフラボンは二日酔い,食欲不振や嘔吐等への漢方薬としても知られています(Niihoら,1990).

クズの赤紫色の花弁におけるアントシアニンとして塩酸性メタノールを抽出液として用いた研究によりデルフィニジン,ペチュニジン,およびマルビジンの3,5-ジグルコシドが同定されています(Ishikuraら,1987).本研究では,酢酸水でアントシアニンを抽出しHPLC分析したところ,上記のアントシアニンとは異なるアントシアニンが主要色素として検出されたため,これらを精製して構造決定を行いました.さらに,生花弁の吸収スペクトルと,数種類のpHのバッファーによる花弁抽出液の吸収スペクトルを比較したところ,液胞内のpHが非常に低い可能性を示す結果が得られました.

一般的に赤いバラの液胞のpHはとても低いとされ,pH3~4と言われています.しかし,クズの花の間接的なpHの測定の結果,およそpH2という非常に低いpHであるかもしれないという結論に達しました.このため,デルフィニジン型のアントシアニンが主要色素であるにもかかわらずペラルゴニジン型の色素による花色に近いということが考えられました.

新花色品種の育種では,青色花の育種がよく聞かれます.しかし,赤色花品種が望まれていながら、なかなか育成の難しいものもあります(リンドウやデルフィニウムなど).本研究の結果が今後の赤色花品種育成に役立つ結果であることを期待したいです.

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ハクサイ根こぶ病抵抗性遺伝子座CRbのゲノム構造解析と責任遺伝子の単離

The tandem repeated organization of NB-LRR genes in the clubroot-resistant CRb locus in Brassica rapa L.

Hatakeyama, K., Niwa, T., Kato, T., Ohara, T., Kakizaki, T., Matsumoto, S.

Molecular Genetics and Genomics (2016)

論文URL: http://link.springer.com/article/10.1007/s00438-016-1281-1

 根こぶ病はハクサイ栽培で問題になる病害で、発病すると根がコブ状に肥大し、養水分吸収が妨げられるため、生育が著しく悪くなりひどい場合枯死します。ハクサイでは、抵抗性を示すカブを素材として抵抗性品種が育種されています。安定した抵抗性品種を育成するためには、複数の遺伝子を付与する必要がありますが、従来の交雑と圃場での選抜による方法では手間と時間の要します。抵抗性遺伝子のDNA塩基配列情報を利用した選抜方法は圃場において選抜することなしに病気に強い植物を選抜することが可能になります。そこで、わたしたちは複数ある抵抗性遺伝子を単離し、その機能を明らかにする研究を進めています。 

 私たちは、市販されている抵抗性ハクサイ品種で最も利用さていると推定されているCRb遺伝子の単離を試みました。CRb遺伝子が存在すると推定されるゲノム領域を詳細に調べると、抵抗性系統1074RRでは植物の病害抵抗性タンパク質に特徴的な塩基配列をもつ6つの遺伝子が同じ向きに並んだ構造であるころがわかりました(図1)。それぞれの遺伝子をモデル植物シロイヌナズナに形質転換し、どの遺伝子を導入した植物が抵抗性を示すのかを調べると、CRb_αが抵抗性を付与できることがわかりました(図2)。本研究で明らかになった遺伝子の塩基配列情報を利用することによって効率的な抵抗性個体の選抜が可能になると期待されます。

図1. 根こぶ病抵抗性系統(1074RR)と罹病性系統(Chiifu-401-42)におけるCRb座ゲノム構造

黒いボックスは植物の病害抵抗性タンパク質をコードする遺伝子を示す

図2. 根こぶ病菌を接種したシロイヌナズナ(a)とCRb_α遺伝子を形質転換したシロイヌナズナ(b) 

抵抗性遺伝子を形質転換体では、根がコブ状に肥大しません.

詳細は、こちら

Small acidic protein 1 and SCFTIR1 ubiquitin proteasome pathway act in concert to induce 2,4‐dichlorophenoxyacetic acid‐mediated alteration of actin in Arabidopsis roots

植物生理学分野の ラーマングループの研究成果が "The Plant Journal" に掲載されました。

岩手大学農学部植物生命科学科のラーマン・アビドゥール博士のグループでは、最近、植物科学専門誌中では国際誌The Plant Journalに、研究成果が掲載されました。この論文ではオーキシン除草剤である2,4-Dの作用のメカニズムに焦点を当てており、その中で、2,4-Dとアクチンが関連する新しいメカニズムを提唱しています。特に、植物成長の2,4-D誘発阻害は、細胞内のアクチンの分解によるものであり,SMAP1及びSCF TIR1タンパク質が2,4-Dの応答のためキーファクターとなることを示しています。この研究は、東京大学の桧垣匠博士およびアメリカ Nobel Foundation の Elison Blancaflor 博士との共同研究により行われました。

ENGLISH

Abidur lab’s research is published in “The Plant Journal’

Dr. Abidur Rahman’s research group at Department of Plant Biosciences, Faculty of Agriculture, Iwate University has recently published their research work in the international journal “The Plant Journal”, The work was focused on understanding the mechanism of action of auxinic herbicide 2,4-D. They provide a novel mechanistic explanation linking 2,4-D and cellular actin. They demonstrated that 2,4-D induced inhibition of plant growth is due to the degradation of intracellular actin and discovered SMAP1 and SCF TIR1 proteins as the key factors for this process. This work was done in collaboration with Dr. Takumi Higaki of University of Tokyo and Dr. Elison Blancaflor of Nobel Foundation, U.S.A.

植物の低温馴化過程におけるGPIアンカータンパク質の複雑な応答

Cold acclimation is accompanied by complex responses of glycosylphosphatidylinositol (GPI)-anchored proteins in Arabidopsis

D Takahashi, Y Kawamura and M Uemura

Journal of Experimental Botany 67:5203-5215 (2016)

論文URL: http://jxb.oxfordjournals.org/content/early/2016/07/28/jxb.erw279.abstract

 植物の凍結耐性は、氷点温度以上の低温に曝すと増大します(低温馴化)。この過程では、植物の細胞膜組成の変化が、細胞の凍結傷害を低減するために重要であるとされています。この細胞膜の表面には、糖脂質の錨(GPI-anchor)で細胞膜表面に繋ぎ止められているタンパク質(GPI-AP)が存在します(図1)。GPI-APは、細胞膜の中でも特定のタンパク質や脂質が集積している微小領域(マイクロドメイン)と相互作用したり、時には酵素により膜表面から切断されて細胞間隙(アポプラスト)に移行するとされています。しかし、低温馴化過程における変動や役割については明らかになっていませんでした。

 そこで本研究では、シロイヌナズナから細胞膜、マイクロドメインおよびアポプラストを抽出して、より多面的、網羅的なGPI-APを同定し、低温馴化過程での変動を調べました。その結果、これまで同定された植物GPI-APの3-4倍である163種類が検出され、それらの多くは細胞膜、マイクロドメイン、アポプラストにおいて異なる低温馴化応答性変動を示しました。また、これらの多くは細胞壁改変に寄与するタンパク質であると推測され(図2)、低温馴化過程における細胞壁変化に、これら一群のタンパク質が関わっているものと考えられます。

図 1 GPI-APの構造と特徴

図 2 低温馴化過程におけるGPI-APの推定機能モデル

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